日本の入国管理局と同様に、アメリカでも移民局は非人道的な対応で知られている。アリゾナ州のフェニックス近くの街イーロイの移民留置所では、医療体制が整わぬなか拘束が続いたことで新型コロナウイルスへの感染が増加したことに対して抗議行動が起きた。特に移民局や留置所で拘束状態への抗議の事例が多く見られる。その他、ミネソタ州セントポール、ペンシルバニア州フィラデルフィア、ミシガン州都ランシングで、「正義のクラクション(honk for justice)」が鳴らされている。
1948年エホバの証人牧師が言論の自由をめぐって最高裁裁判で争った興味深い一件がある。エホバの証人は、1870年代にアメリカのピッツバーグでチャールズ・テイル・ラッセルによって生まれた新宗教である。日本でも訪問宣教で知られるように、その組織は彼の死後も組織化して世界に広がり、積極的に非信者への宣教を行う。そこで街宣車が、非信者である聴衆に広く声を届けられる有効な手段として採用されたのである。裁判では、公に音を鳴らすことは信教の自由にどう含まれるのかが裁判で争われた点で、法的に重要な件でもある。つまり、警察がライセンス更新を許可するかしないかの判断する時、「音がうるさい」ことが理由なのか「信仰の中身」が問題なのかどうやって線を引くのかという問いである。裁判では、街宣を許可する制度は「新教の自由」の観点から憲法違反とされたが、エホバ側の主張として「音を公で出すこと=非信者への宣教」は、手段ではなく信仰の中身と切り離せないものだ、と主張された。これを「街宣車の宗教(sound car religion)」という用語で考察している宗教社会学の研究もある。
アダム・シュレシンジャー(Adam Schlesinger)に関する最も王道の説明とは、1990〜2000年代にいわゆるパワーポップバンド*2として活躍したファウンテインズ・オブ・ウェイン(Fountains of Wayne)のメインメンバーでベーシスト、そして映画やテレビや舞台の世界で大活躍した音楽プロデューサーというものでしょうか。
彼らの歌詞には、ハッケンサック(Hackensack、モントクレアよりもうちょいNYC寄り)やファイア・アイランド(Fire Island、NYCから東のロングアイランド島の下端)などと具体的な地名や固有名詞がたくさん登場します。二人がこれまで暮らしてきた記憶が入り混じり、モザイク状に「アメリカの郊外」を描いているように思います。また、彼らが通ったマサチューセッツ州のウィリアムカレッジは、大西洋に面した州都ボストンとは全く逆の西端に位置しており、国立公園だらけの森の中にあるキャンパスタウンです。アメリカ合衆国建国の時にイングランド人が入植した、冬には氷点下10℃越えの寒い土地で、「Winter Valley Song」に出てくる「ニューイングランド」はこの辺りのことです。
「パワーポップ」と一口に説明されることも多いのですが、そのサウンドについて詳しくいえば、「王道」というよりも「はずし」があるところに魅力があると思います。曲のコードにはシンプルよりは工夫された展開があり、手癖でサスペンドが細かく入ったり(例えばsus4などのこと)、コードが変わるタイミングがちょっとだけズレていたりします(「Radiation Vibe」)。シャッフルしたリズムのアコースティックギターが支えるカントリー的なものも多く(「Hang Up On You」「Hey Julie」)、繰り返しが続く歌モノの楽曲に深みを与えています。エレクトリックギターには、しっかりエフェクトを効かせながらファズのチープさを強調したりします(「Lost in Space」)。なんだかどこか懐かしい。
こうしたノスタルジックな音作りは、過去の作品を参照するサンプリング的な作法にも由来しています。最大のヒット作「ステーシーのママ(Stacy's Mom)」のギターリフが、カーズの代表曲「Just What I Need」をほぼ引用しているのはよく知られているのですが、その他にはキンクスやビッグスターなどにも強く影響されていて、彼らがオマージュするバンドを時代のセンスで蘇らせるような、いわば演劇的なところがあります。
メロディックで秀逸なソングライティングだけでなく、1960〜70年代のクラシックなロックやカントリーに裏打ちされていることで、単にポップなイージーリスニングを超えた安定感が生まれているように思います。セカンドアルバム『Utopia Parkway』の時にポージーズのドラマーのブライアン・ヤング(Brian Young)が加入するのですが、オーディションで彼が叩くのを聴いたアダムとクリスが興奮したのが、Steve Miller Bandの「Swingtown」のリフだったといいます。泥臭さを残す70年代のブルースロックです。
そういえば、ブリトニー・スピアーズの「Baby One More Time」を、1999年というまさに彼女の絶頂期にカバーしてもいます。これは、「反メジャー」という意味での「オルタナティヴな」ロック・バンドとしてのアイデンティティがあってこその可笑しさで、これにもノベルティを感じます。こうしたサンプリング的な再演によってノベルティ感を出すという発想があるあたりが、まさしくアダムのプロデューサーとしての力量を感じます。
I passed Fountains of Wayne every day on my commute to and from the record store I worked at in the '90s and the band that named themselves after this place is a part of my Jersey DNA. My heart aches for all of Adam's friends and family. #fountainsofwaynepic.twitter.com/H0UjNIuqMh
さらに4月22日には、ニュージャージー州の団体が、コロナ禍のファンドレイジングイベントFund’s JERSEY 4 JERSEYを開きます。そこで、ファウンテインズの三人が再結成するとのこと(!)。アダムの死後初めてバンドとして公の場に登場、これまでバンドはほぼ活動休止状態だったのでこれは待望です。アダムに代わりベースにSharon Van Ettenが参加。同州出身のブルース・スプリングスティーンのラジオ番組でも放送されるようです。日本時間では23日の早朝です(録画動画など見つけたら追記します→早速ファンの録画を見つけました。さらに音質・画質が高いものを別のファンが投稿してくれました。)。
このなかでアダムが最もアクティヴなメンバーとして活動していたのは、アイヴィーでしょう。事項でも扱う映画『メリーに首ったけ』に参加した「This is the Day」などのヒットソングも多く、アメリカのコーヒーショップやラジオでよく流れています。ウィスパーボイスのフランス人女性ボーカルのドミニク・デュラン、こちらもあとで紹介しますが、映画『あなたにすべてを』の音楽を手掛けたアンディ・チェイスとの3人組ユニットです。初期作セカンドアルバム『アパートメント・ライフ』は、いかにもマンハッタン近郊のアパート生活を描き、てらいなく都会的で透明な音像です。筆者が初めてニューヨークに遊びに行ったとき、本作は旅行用CDケースに選びぬいて詰め込む一枚を飾り、機内でCDプレーヤーで繰り返し聴いたのを覚えています。
2003年の「ステーシーのママ」のスマッシュヒットによってファウンテインズ・オブ・ウェインは、インディーロック界のみならず、文字通り一世を風靡することになったわけですが、レーベルとの契約のゴタゴタやツアーのストレスなどからクリスの健康状態が次第に悪くなり(日本公演でのキャンセルもありました)、解散説も流れる中で、何とかアルバムを完成させてきました。残念ながらファウンテインズ・オブ・ウェインとしては2011年の『Sky Full of Holes』が最後の作品となりました(本作がSpotifyで登録のみで公開されないのにも事情がありそうです)。そのような中で、アダムの活動の中心はプロデューサー業となっていきます。
本国アメリカに比べると、日本でのプロデューサーとしての知名度は「知る人ぞ知る」かもしれません。しかし、彼の楽曲・企画が使われている映画やテレビなどの作品は日本でも数多く知られています。例えば、キャメロン・ディアス主演の『メリーに首ったけ(There's Something About Mary 1998)』や、トム・ハンクス主演・初監督の『すべてをあなたに(That Thing You Do! 1996)』などがあります。セサミストリートの楽曲も手掛けていたり、エミー賞を受賞した人気ドラマシリーズ『Crazy Ex Girlfriend』はNetflixで配信されてよく知られています。
デヴィッド・ミード(David Mead)は、ナッシュビルで活躍する弾き語りの歌歌い。エモく甘い歌声とアコースティックギター1本で超絶聴かせます。セカンドアルバム『Mine and Yours』(2001)、セブンスの『Dudes』(2010*5)がアダムのプロデュースです。ファウンテインズの『Welcome Interstate Managers』(2003)の最後のナンバー「Yours and Mine」は、ミードとの仕事からインスパイアされたのだろうと想像します。
マイク・ヴァイオラ(Mike Viola)は、アダムとも付き合いの長い、グラミー賞候補の名プロデューサーです。長くなるのでそちらのキャリアは本稿では割愛しますが、バンドではソロ名義のほか、Candy Butchers名義でも作品を多く残す。ダミ声にこぶしを利かせて、ちょいダサ感が素敵な90年代的パワーポップです。『Falling into Place』が佳作。最近ではオールドスクールなファンクグループVulfpeckの「For Survival (feat. Mike Viola)」で歌っていて、こちらも最高!
先日18日には、映画内バンドのオニーダーズ(One-dars The BeatlesやThe Monkeesなど当時のバンドが綴りを工夫した*7ところ、誤ってこう読まれてしまうというネタがある)ことワンダーズ(The Wonders)のメンバーが勢揃いで、YouTubeで同窓会を開きました。映画を流しながらコメンタリーをつけて、裏話を聴かせてアダムの追悼をした、コロナ基金のファンドレイジングイベントでした。この時の寄付や、レア音盤の売り上げは、全額「アダム・シュレジンジャー」の名義で寄付されるそうです。
このことがよく現れているのは、例えば、深夜トーク番組(late night talk show)司会者のスティーヴン・コルベアのクリスマス番組のプロデュースです。late night talk showとは、アメリカのテレビにおける伝統的な様式で、ホストのコメディアンの名を冠して毎晩放映される、音楽とトークで笑いをとるバラエティ番組です。多くは毎日夕方頃に録画して、その日に起こったニュースが時事ネタとしていじられます。(映画『ジョーカー』やその元ネタ『キングオブコメディ』で描かれたあれです。)
アダムは2009年とか比較的近年参加しており、ここでもコミカルでノヴェルティな曲をたくさん作っています。例えば「それにはアプリがあるよ(There’s an App for That)」は、自転車パンクしたら、それ用のアプリがiPogo(笑)にあるよ、猫の毛を櫛でとくにもアプリがあるよ、バターを切るにもアプリがあるよ…というだけの歌ですが、デジタルネイティヴの子供たちがなにをするにもまずアプリ!と思ってしまう(?)メンタリティに共感を与えながら、そういうデジタルが行きすぎた状況をパロディにする楽しい曲です。
時々天使も登場するのですが、ほぼ神様による独白の一人芝居です。この世の創造主のことをはちゃめちゃで自分勝手な下衆いやつとして描き、徹底的に茶化しています。題の「An Act of God」は、「神の仕業/芝居」とでも訳せるでしょうか。2015年の初演時には、大人気テレビドラマの『ビッグ・バン・セオリー』の主役ジム・パーソンズが神様を演じたこともありプラチナチケットになりました。筆者は運よく抽選に当たり鑑賞することができたのですが、時差ボケの目を覚ますほどの抱腹絶倒な出来でした。コロナ前にはすでに休演していたようですが、再演があったらぜひ観てほしい作品です(宗教ネタに疎い人でも、聖書のことを軽く予習しておけば大体楽しめると思います)。
「Hung Up On You」この曲はなんちゃってカントリーソングなんだよ、おもろいでしょって、ファウンテインズのアイロニーが好きなんだって話をした。超保守的な人々が多いこの土地に住むリベラルなその友人は、カントリーのことを、ラジオでまあ流れるけど、古臭くて聴かんなあ。でもこのバンドはおもろいわ、って。
[Part 1] Steven Gold (Crazy Ex-Girlfriend), Jody Porter (Fountains of Wayne), Robert Smigel (Saturday Night Live, TV Funhouse), lifelong friends Jonathan Small and Jeremy Freeman, David Bar Katz (House of Buggin’, FREAK), Steve Yegelwel (A&R/Atlantic Records) and acclaimed musician Mike Viola (That Thing You Do).
[Part 2] Rachel Bloom (Crazy Ex-Girlfriend), Andy Chase and Dominique Durand (Ivy), songwriter Sam Hollander, Micky Dolenz (The Monkees) and Anna Nordeen and Reni Lane (Fever High).
アメリカ全国のミュージアムは合計すると、閉鎖のために1日あたり3300万ドルを損失しています。アメリカ博物館連合(American Alliance of Museums、AAM)の試算では、そのうち約三割のミュージアムは政府からの支援がなくては再び開館することは困難だとされています。そのうちのほとんどは小規模で地方のミュージアムです。アメリカ中で芸術が全くない世界を想像してみてください。
この喫緊の行動なくしては、来る数年間、我が国の芸術文化は破壊されてしまうのです。 ーーー <原文> As the federal government drafts an economic relief package to provide emergency relief to American workers and businesses, it is critical that arts and cultural institutions—along with their employees—are supported in this package. In a package of nearly $2 trillion, we are urging Congress to include $4 billion in relief for nonprofit museums and cultural institutions and their workers. We are also urging Congress to adopt a temporary "universal charitable deduction" that will help incentivize more charitable giving at a time when we project a steep decline.
Already, COVID-19 has had a profound impact on the arts and culture sector. It is projected that museums across the nation are collectively losing at least $33 million a day because of closures. The American Alliance of Museums estimates that 30 percent of museums—mostly in small and rural communities—will not be able to re-open without swift financial support from the government. Imagine what the United States would look like without the arts.
Museums provide important educational, cultural, and economic value to our communities and country. American Alliance of Museums and Oxford Economics estimate that museums contribute $50 billion to the U.S. economy and $12 billion in tax revenue. Beyond that, museums support 726,000 jobs across the country, providing local employment to Americans in every state.
Without urgent action, our nation’s arts and culture will be damaged for years to come.