column/review

「2023年極私的映画十選/The 10 Best Movies of the Year ’23」を開催したので振り返り

年末になるとベストやランキング云々などの記事や特番がたくさんあって楽しい。今年は機会をつくってちょっと整理と振り返りをやってみた。この一年はシネフィルの学生と出会い映画談義を続けてきたこともあり、「2023年極私的映画十選/The 10 Best Movies …

「大島新『国葬の日』が映す、あいまいな日本の民意」を wezzyに寄稿しました(未公開原稿をここに公開します)

寄稿しました。プロパガンダに陥らない選挙・政治映画の良作を連発している大島新さんの最新作です。民主主義を観察する映画。ここで触れられなかった論点ですが、寺山修司の『日の丸』やPortB高山明の「個室都市」シリーズともつなげて考えるべき映画だと考…

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス Everything Everywhere All At Once』の評というか備忘録

" data-en-clipboard="true"> マルチバースが脳内世界で展開し、ガジェットによってそれにアクセスできるようになる。こうした設定が持つ世界観はとてもポスト1970年代的だ。ヒッピーからニューエイジへ、コンピュータ発のプログラム思考、サイケデリックと…

2022年3月16日に見た「現在」:猪熊弦一郎現代美術館「丸亀での現在」展とコミュニケーションが堆積する〈島〉

www.mimoca.org 丸亀の猪熊弦一郎現代美術館の「丸亀での現在」展を訪れた。2020年開催予定だった企画が、コロナ禍により一年の延期を経て日の目を見た。そのテーマが「現在」であると同時に「変化」であることが、チラシにデザインされたタイトル案の変遷に…

コロナ禍ここまでの活動を振り返る:(ほぼ)2020-2021年度

日本国内の「コロナ禍」がはじまってだいたい2年くらいだ。パンデミックの強い影響下で社会を生きはじめてからそれくらい。ほぼ、2020年度から2021年度にあたる。ちょっと振り返ってみたい。 環境と意識の持ちようの変化 進めたプロジェクト 活動一覧 Writi…

『アメリカの〈周縁〉をあるく』(中村寛・松尾眞著)の書評を『図書新聞』に書きました

「ふたりでアメリカを〈何でも見てやろう〉ーー「書かない」人類学的実践の現在地 中村寛・松尾眞『アメリカの〈周縁〉をあるく』」 『図書新聞』3531号、2022年2月19日。 書評へのリンクです。 編集部のご好意で、拙記事はここからDLできるようにさせていた…

香川1区に観る「楽しい政治」 大島新『香川1区』/ダースレイダー+プチ鹿島『香川1区ナンデス』

「楽しい政治」コンテンツが豊作だった香川1区 " data-en-clipboard="true"> 昨年の衆員選では選挙区香川1区が、政治エンタメの宝庫となっていた。たとえばライターの和田靜香さんが立て続けに出版したルポルタージュ。10月18日から31日まで衆院選公示から…

想田和弘の観察映画「以外」を短くレビュー/「日常を「観察」する映画作家・想田和弘の仕事」11/14~11/23 東京・シネマハウス大塚

想田和弘監督作品のレトロスペクティヴが、今日からシネマハウス大塚で開催されます。DVD化や配信されていない『牡蠣工場』をはじめとして、スクリーンで一挙上映される非常に貴重な機会となりそうです。 想田監督は、先行する「ダイレクトシネマ」などの言…

【連載】『ユダ&ブラック・メシア』とH.E.R.〈Fight For You〉――映画を深める二つのミュージックビデオを読む

『ユダ&ブラック・メシア』とH.E.R.〈Fight For You〉――映画を深める二つのミュージックビデオを読む 少し前になりますが、wezzyでの連載が公開されています。今回はブラックパンサー党を描いた映画『ユダ&ブラック・メシア』について。ミュージックビデオと…

建築は「調理済み」の展覧会素材? 「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」@東京国立近代美術館

kumakengo2020.jp キュレーションが立っている。コンセプトすなわち言語による切り取りが明晰に入ってくる。「建築」という営みそのものが、コンセプトを立てるスタイルをとることに由来していると感じる。すでに「調理済み」で、その点では佐藤可士和展の際…

【連載】お化けと差別に背筋が凍るーードラマ『ゼム』が描く住まい・契約・トラウマの人種主義

今月の連載は、ドラマ『ゼム(Them)』を取り上げました。 1950年代のアメリカらしい郊外を舞台にしたホラーものなのですが、アフリカ系一家が白人居住区に引っ越してきた事で起こる悲劇という2020年代らしい設定となっています。評論では、「人種差別」を「…

ギフトショップと展示が一体化した初の国立美術展では?「美術でない展」としてはナイストライ:佐藤可士和展@国立新美術館

" data-en-clipboard="true">所属している文化資源学会で加島卓さんが講演される。この機会に佐藤可士和展を訪れたときに書いた文章を振り返り、改稿版を公開する。 " data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true">デザイナーの巨匠、佐藤可士和の…

ある「公共」に、合う方法を:「フォーラムとしてのミュージアム」論とICOM「ミュージアム定義をめぐる摩擦問題」

" data-en-clipboard="true"> フォーラムとしてのミュージアム論をいま読むこと ICOM「ミュージアム定義をめぐる摩擦問題」 適切にデモクラシーが機能する「場」はどこ? メタファーで生まれる「ミュージアム」である必然性 " data-en-clipboard="true">山本…

【連載】「アウトサイド」からアメリカを映す:『ノマドランド』のイエ・シゴト・タビ

Wezzyの連載第1弾です。映画『ノマドランド』を取り上げました。まだ劇場公開中で、近日中には配信も始まります。でっかいスクリーンがオススメ。 「アウトサイド」からアメリカを映す――『ノマドランド』のイエ・シゴト・タビ wezzy 2021.06.05 wezz-y.com

連載〈「楽しい政治」のアメリカ〉をwezzyで始めることになりました

wezzyで連載が始まります。毎月ひとつテーマを取り上げてアメリカ社会のいろいろを紹介します。ひとつよろしくおねがいもうしあげます。 新しくはじまる連載、〈「楽しい政治」のアメリカ〉。アートやカルチャーをフックにして、ときにお気楽、ときにハード…

美術と美術館が語りつぐ公共で/の記憶:藤井光《爆撃の記録》@原爆の図 丸木美術館、東京都平和祈念館アーカイブズ

原爆の図 丸木美術館で、藤井光《爆撃の記録》の展示が開催されている。 marukigallery.jp この作品は1999年に凍結された「東京都平和祈念館」計画を題材にしたもので、「不在」を展示することによって「戦争を公的に記録し、公共の記憶とすること」の不可能…

講談社現代ビジネスに「カエルのぺぺ右翼化事件」についての記事を書きました。

講談社現代ビジネスに、インターネットミーム「カエルのぺぺ」が右翼のアイコンになった事件についての記事を書きました。 「なぜオルタナ右翼はマンガのカエルを「神」として担ぎ上げたのか?:「カエルのぺぺ右翼化事件」を考える」(講談社現代ビジネス、…

ネット時代の「偶像=イコン=アイコン」の物語:『フィールズ・グッド・マンFeels Good Man』(アーサー・ジョーンズ 2020)

「偶像=イコン=アイコン」の物語 ネットコミュニケーションが「偶像/イコン」化する「アイコン」 党派的イデオロギー対立ではなく、準備された「装置」とみる 『フィールズ・グッド・マン Feels Good Man』(監督アーサー・ジョーンズ、2020)を試写で観…

広い時代設定が社会のジェンダー観をあぶり出す 「Inside/Out 映像文化とLGBTQ+」早稲田大学演劇博物館

" data-en-clipboard="true">今年初の展覧会は、早稲田大学演劇博物館で「Inside/Out 映像文化とLGBTQ+」を鑑賞。 " data-en-clipboard="true"> 2室のみというごく小さな規模の展示にもかかわらず、かなり幅広い時間軸の設定。大づかみに主題について理解で…

よく知る風景を「見知らぬもの」にする事と気まずさの美学:『もう終わりにしよう I’m Thinking of Ending Things』(チャーリー・カウフマン Netflix、2020)

Netflixの『もう終わりにしよう I’m Thinking of Ending Things』を観た。今年のベスト級に良かった。 シンプルなようでつかみどころのないプロットから、キーワードを列挙してみる。実家と帰省。家族の価値観との違和。ドライブ。昔通った学校。甘すぎるア…

日本の現代美術をもっと脱植民地化すべきだった/森美術館「STARS:現代美術のスターたち――日本から世界へ」

森美術館で開催されている「STARS:現代美術のスターたち――日本から世界へ」展を観た。 選ばれた六人の現代美術家は、贔屓目に言っても「日本を代表する」と言って良いアーティストたちである。宣伝文句でも謳われている通り、この展示ひとつで、第二次大戦…

「パブリックヒストリーが開く虐殺の歴史――オクラホマ州タルサをトランプ集会とHBOドラマ「ウォッチメン」で見る」を寄稿しました。

フィールドワーカーためのウェブマガジンFENICSで、コロナ期の社会運動について連載中です。第6回が公開されました。 「パブリックヒストリーが開く虐殺の歴史――オクラホマ州タルサをトランプ集会とHBOドラマ『ウォッチメン』で見る」 (連載・コロナ禍のフ…

西池袋マダムシルクは「旅行」をする場所だった。

お盆の相変わらずうだるような暑さの中、自転車を走らせて西池袋へ向かった。或るバーが閉まると聞いたからである。マダムシルクは、雑居ビルが立ち並ぶ繁華街の中心地区から、少しだけ外れたところにある。 池袋の大学に通っていた頃、初めて訪れた。飛び込…

スパイク・リー「3 Brothers」(2020):未だに奪われ続けている「物語」を作る力を取り戻すカットアップ

Spike Lee ”3 Brothers” (2020) 3 Brothers-Radio Raheem, Eric Garner And George Floyd. pic.twitter.com/EB0cXQELzE — Spike Lee (@SpikeLeeJoint) 2020年6月1日 黒人の苦境を題材に撮り続けてきたハリウッド映画監督スパイク・リーによるショートフィル…

「家族」が必ず参加しないといけないのなら選挙活動は怖いと思った:大島新 監督『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020年)@ポレポレ東中野

大島新 監督『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020年)をポレポレ東中野で観た。 現職衆議院議員小川淳也氏の選挙・政治活動を、17年にも渡って撮影したドキュメンタリー。 自分が教える大学の講義の話になるが、折に触れ、「楽しい政治」をキーワードに…

NHK『世界のいま』の黒人人権運動の紹介はどこが「差別的」だったのか?アメリカ学会の研究者からの声明のポイント

この声明文は、NHKに対して問題を伝え、再度正式な謝罪や対応を求めるもので、論拠をのせた解説にもなっています。問題の所在を以下の4点に分けてうまく説明しています。関心があるのに問題がわからない、だからあまり口に出せないなあ、と感じていた人はぜ…

Do you need culture? ジャンルを超えた文化支援のヨコつなぎ

これまでのエントリーでも紹介した通り、‪コロナ禍の文化支援にはそれぞれの表現ジャンルで様々な試みが起こっています。 それらに対して、領域を横断する大規模なプロジェクトが立ち上がりました。#WeNeedCulture ‬のハッシュタグで情報が広がっています。…

盗用なのか流用なのか:米大手スーパー「トレーダージョーズ Trader Joe’s」から考える「文化のアプロプリエーション」」

全米売り上げで単純に測っても、2000年代半ばには全米スーパー第二の売上を誇るほどに成長し、米国を代表するスーパーマーケットとなった。この人気について少し解説してみよう。

【ネタバレ注意】原一男『れいわ一揆』5つの「おもしろい」:世界中で崩壊する民主主義に蔓延るグロテスクの縮図

※以下、本編に関するネタバレがあります。事前に内容を知りたくないという方はご遠慮ください。 『れいわ一揆』2019.11.2@東京国際映画祭 監督:原一男 製作:島野千尋 撮影:原一男 島野千尋 岸建太朗 堀井威久麿 長岡野亜 毛塚 傑 中井献人 田中健太 古谷…

「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」:映画文化と経済を持続させる鮮やかなその仕組み

「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」が、開始後3日目にして、早くも目標額の1億円超を達成しました(5月14日まで)。祝。参加させてもらっている身としては余計に嬉しいものです。これが映画の現場の経済規模としてどの程度の意味を持つのか…