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「2023年極私的映画十選/The 10 Best Movies of the Year ’23」を開催したので振り返り

年末になるとベストやランキング云々などの記事や特番がたくさんあって楽しい。今年は機会をつくってちょっと整理と振り返りをやってみた。この一年はシネフィルの学生と出会い映画談義を続けてきたこともあり、「2023年極私的映画十選/The 10 Best Movies …

「大島新『国葬の日』が映す、あいまいな日本の民意」を wezzyに寄稿しました(未公開原稿をここに公開します)

寄稿しました。プロパガンダに陥らない選挙・政治映画の良作を連発している大島新さんの最新作です。民主主義を観察する映画。ここで触れられなかった論点ですが、寺山修司の『日の丸』やPortB高山明の「個室都市」シリーズともつなげて考えるべき映画だと考…

『クリード 過去の逆襲』評 「ロッキー=クリード」シリーズに見る四つの「再生と継承」

ネタバレ記述アリ〼 1.ロッキーからクリードへ 2.クーグラーからジョーダンへ 3.イーストウッドからジョーダンへ? ジョーダンからケントへ? 4.フィラデルフィアからロサンゼルスへ 「ロッキー」および「クリード」シリーズの最新作『クリード 過去…

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス Everything Everywhere All At Once』の評というか備忘録

" data-en-clipboard="true"> マルチバースが脳内世界で展開し、ガジェットによってそれにアクセスできるようになる。こうした設定が持つ世界観はとてもポスト1970年代的だ。ヒッピーからニューエイジへ、コンピュータ発のプログラム思考、サイケデリックと…

コロナ禍ここまでの活動を振り返る:(ほぼ)2020-2021年度

日本国内の「コロナ禍」がはじまってだいたい2年くらいだ。パンデミックの強い影響下で社会を生きはじめてからそれくらい。ほぼ、2020年度から2021年度にあたる。ちょっと振り返ってみたい。 環境と意識の持ちようの変化 進めたプロジェクト 活動一覧 Writi…

香川1区に観る「楽しい政治」 大島新『香川1区』/ダースレイダー+プチ鹿島『香川1区ナンデス』

「楽しい政治」コンテンツが豊作だった香川1区 " data-en-clipboard="true"> 昨年の衆員選では選挙区香川1区が、政治エンタメの宝庫となっていた。たとえばライターの和田靜香さんが立て続けに出版したルポルタージュ。10月18日から31日まで衆院選公示から…

FM宝塚「Afternoon View」に出演しました

ラジオ番組にお邪魔しました。 日本国内では珍しい「ミュージアム研究」を学べるゼミについて知ってもらえたらと思い、授業や研究についてお話ししました。 宝塚市のFMということで、打ち合わせでは宝塚ネタはないかなという話になり、そういえば今まで一度…

想田和弘の観察映画「以外」を短くレビュー/「日常を「観察」する映画作家・想田和弘の仕事」11/14~11/23 東京・シネマハウス大塚

想田和弘監督作品のレトロスペクティヴが、今日からシネマハウス大塚で開催されます。DVD化や配信されていない『牡蠣工場』をはじめとして、スクリーンで一挙上映される非常に貴重な機会となりそうです。 想田監督は、先行する「ダイレクトシネマ」などの言…

「コロナ禍におこる社会運動の〈かたち〉」武蔵大学公開講座

武蔵大学の公開講座でお話をしました。 「コロナ禍におこる社会運動の〈かたち〉」と題して、コロナ禍に揺れるアメリカの社会運動についてその方法に着目して紹介をしました。 コロナ禍では命の人種間格差が可視化されましたが、ブラック・ライブズ・マター…

【連載】『ユダ&ブラック・メシア』とH.E.R.〈Fight For You〉――映画を深める二つのミュージックビデオを読む

『ユダ&ブラック・メシア』とH.E.R.〈Fight For You〉――映画を深める二つのミュージックビデオを読む 少し前になりますが、wezzyでの連載が公開されています。今回はブラックパンサー党を描いた映画『ユダ&ブラック・メシア』について。ミュージックビデオと…

【連載】お化けと差別に背筋が凍るーードラマ『ゼム』が描く住まい・契約・トラウマの人種主義

今月の連載は、ドラマ『ゼム(Them)』を取り上げました。 1950年代のアメリカらしい郊外を舞台にしたホラーものなのですが、アフリカ系一家が白人居住区に引っ越してきた事で起こる悲劇という2020年代らしい設定となっています。評論では、「人種差別」を「…

【連載】「アウトサイド」からアメリカを映す:『ノマドランド』のイエ・シゴト・タビ

Wezzyの連載第1弾です。映画『ノマドランド』を取り上げました。まだ劇場公開中で、近日中には配信も始まります。でっかいスクリーンがオススメ。 「アウトサイド」からアメリカを映す――『ノマドランド』のイエ・シゴト・タビ wezzy 2021.06.05 wezz-y.com

連載〈「楽しい政治」のアメリカ〉をwezzyで始めることになりました

wezzyで連載が始まります。毎月ひとつテーマを取り上げてアメリカ社会のいろいろを紹介します。ひとつよろしくおねがいもうしあげます。 新しくはじまる連載、〈「楽しい政治」のアメリカ〉。アートやカルチャーをフックにして、ときにお気楽、ときにハード…

ネット時代の「偶像=イコン=アイコン」の物語:『フィールズ・グッド・マンFeels Good Man』(アーサー・ジョーンズ 2020)

「偶像=イコン=アイコン」の物語 ネットコミュニケーションが「偶像/イコン」化する「アイコン」 党派的イデオロギー対立ではなく、準備された「装置」とみる 『フィールズ・グッド・マン Feels Good Man』(監督アーサー・ジョーンズ、2020)を試写で観…

よく知る風景を「見知らぬもの」にする事と気まずさの美学:『もう終わりにしよう I’m Thinking of Ending Things』(チャーリー・カウフマン Netflix、2020)

Netflixの『もう終わりにしよう I’m Thinking of Ending Things』を観た。今年のベスト級に良かった。 シンプルなようでつかみどころのないプロットから、キーワードを列挙してみる。実家と帰省。家族の価値観との違和。ドライブ。昔通った学校。甘すぎるア…

「パブリックヒストリーが開く虐殺の歴史――オクラホマ州タルサをトランプ集会とHBOドラマ「ウォッチメン」で見る」を寄稿しました。

フィールドワーカーためのウェブマガジンFENICSで、コロナ期の社会運動について連載中です。第6回が公開されました。 「パブリックヒストリーが開く虐殺の歴史――オクラホマ州タルサをトランプ集会とHBOドラマ『ウォッチメン』で見る」 (連載・コロナ禍のフ…

スパイク・リー「3 Brothers」(2020):未だに奪われ続けている「物語」を作る力を取り戻すカットアップ

Spike Lee ”3 Brothers” (2020) 3 Brothers-Radio Raheem, Eric Garner And George Floyd. pic.twitter.com/EB0cXQELzE — Spike Lee (@SpikeLeeJoint) 2020年6月1日 黒人の苦境を題材に撮り続けてきたハリウッド映画監督スパイク・リーによるショートフィル…

「家族」が必ず参加しないといけないのなら選挙活動は怖いと思った:大島新 監督『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020年)@ポレポレ東中野

大島新 監督『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020年)をポレポレ東中野で観た。 現職衆議院議員小川淳也氏の選挙・政治活動を、17年にも渡って撮影したドキュメンタリー。 自分が教える大学の講義の話になるが、折に触れ、「楽しい政治」をキーワードに…

【随時更新】コロナ時代の「文化支援」の様々な試み

この記事では、新型コロナウイルスのパンデミック以後の社会における、アートやエンターテインメントなど広い意味での「芸術文化」に関する文化支援・文化政策などについてまとめています。 ●政府・自治体による文化政策 【国内】 政治・自治体の動き シンポ…

Do you need culture? ジャンルを超えた文化支援のヨコつなぎ

これまでのエントリーでも紹介した通り、‪コロナ禍の文化支援にはそれぞれの表現ジャンルで様々な試みが起こっています。 それらに対して、領域を横断する大規模なプロジェクトが立ち上がりました。#WeNeedCulture ‬のハッシュタグで情報が広がっています。…

【ネタバレ注意】原一男『れいわ一揆』5つの「おもしろい」:世界中で崩壊する民主主義に蔓延るグロテスクの縮図

※以下、本編に関するネタバレがあります。事前に内容を知りたくないという方はご遠慮ください。 『れいわ一揆』2019.11.2@東京国際映画祭 監督:原一男 製作:島野千尋 撮影:原一男 島野千尋 岸建太朗 堀井威久麿 長岡野亜 毛塚 傑 中井献人 田中健太 古谷…

「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」:映画文化と経済を持続させる鮮やかなその仕組み

「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」が、開始後3日目にして、早くも目標額の1億円超を達成しました(5月14日まで)。祝。参加させてもらっている身としては余計に嬉しいものです。これが映画の現場の経済規模としてどの程度の意味を持つのか…

想田和弘『精神0』@仮設の映画館プロジェクト:上映文化の存続のための「映画の経済」

ドキュメンタリー映画監督の想田和弘さんが新作の『精神0』を、「仮設の映画館」で上映公開します。 『精神0』 2020年5月2日(土)10:00〜 配給:東風 渋谷シアター・イメージフォーラム、岡山シネマクレール他 seishin0.com ※追記:ちょうど取材地の岡山…

【ネタバレ注意】想田和弘『精神0』:「無為=0の精神」で映画における「物語の否定」を試みる映画

想田和弘監督の新作『精神0』を観た。 目次: (1)「公/私」「聖/俗」の二分法とそれを崩す「女性」の存在:「物語」を否定し続ける構成 (2)撮影=観察の倫理と論理:岡山で生まれた筆者が見た景色 (3)「純愛」映画? (4)「中年/自己/物語」…

構え銃…打て!/お気軽に撮影を Point and Shoot

目の前で現実に起こっていることの悲惨さと、それがどうしようもなくキッチュなものとして現れている居心地の悪さ。その意味で『アクト・オブ・キリング』以来の傑作ドキュメンタリーだと思う。マーシャル・カリー監督*1、2014年。@フィラデルフィアフィルム…

宇宙開発/開拓史と食:スタートレックとスターウォーズ

睡眠学習(=サブリミナル)ネタ2。宇宙食の発展について。ワインやビールを無重力で飲むだ(ビールはむずいらしい)とか、ソ連とアメリカの宇宙食の開発の違いとか。宇宙開発/開拓史と食事の関係は、立派なフードスタディーズののネタになりそうだ。 http…

「当たり前に生きる」ことの脆さ:ワン・ビン(王兵) 『無言歌』

当たり前に生きることとはこれほど難しいのか。本作の舞台は1960年、中国西南部の荒地。文化大革命前、毛沢東は自由な批判を受け入れるとして「百花斉放・百家争鳴」の運動を推進した。しかし、それに従って政府・毛沢東を批判した人々は、翌年徹底的に弾圧…

水、動植物、民間療法は誰のものなのか:Irena Salina『FLOW』

ある機会に、水ビジネスについてのドキュメンタリー、『FLOW For Love of Water』(Irena Salinaイレーナ・サリーナ監督、2008)を『松嶋×町山 未公開映画を観るTV』(TOKYO MX)で観たのを思い出す。 近代のインフラ開発事業以後、世界中の水は、わずか3社…

郊外論と当事者性:サイタマノラッパー、サウダーヂ、ひかりのおと

作品評ではないのだけれど、「ひかりのおと」を観たあと考えたけど書ききれなかったことを備忘録的にまとまりなく。●「地方郊外」発の物語と当事者性 こうした流れは、ジャーナリストや学者たち「中心」の立場から地方を「周縁」化する言説に対して、当事者…

山下敦弘・Q.B.B. 『中学生日記』

先の『ひかりのおと』のエントリーで考えたことはなんだろうとふと考えてみたんだけど、「観客がどういう立場で映画を観るのか。そのことを制作者はいかに設定(ないし操作)できるのか」ということだろうか。エントリー書きながら実家にDVD持って帰ってきて…