美術と美術館が語りつぐ公共で/の記憶:藤井光《爆撃の記録》@原爆の図 丸木美術館、東京都平和祈念館アーカイブズ

原爆の図 丸木美術館で、藤井光《爆撃の記録》の展示が開催されている。

marukigallery.jp

この作品は1999年に凍結された「東京都平和祈念館」計画を題材にしたもので、「不在」を展示することによって「戦争を公的に記録し、公共の記憶とすること」の不可能性について鋭い批評的まなざしを向けている。2016年に東京都現代美術館で開催された「キセイノセイキ」展で展示されたものだ。

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会場となった丸木美術館は丸木位里丸木俊夫妻による《原爆の図》を保存公開しているところであり、両作品はともに「戦争」を介して「現在」と「過去」のあり方を問うもので、第二次大戦の記憶の風化や継承という今後ますます重要になっていく問題について考える極めて重要な機会を与えてくれる作品だ。

 

藤井さんの展示に合わせて作られたこのウェブサイトでは、「東京都平和祈念館」計画に関する資料と併せて、展覧会でワークショップを実施し来館者から聞き取った声を公開している。展示評などの掲載情報もまとめてある。東京大空襲の記憶について研究されている都市社会学者山本唯人さんによるものだ(ご本人の解説)。

tokyopeacemuseum.amebaownd.com

 

「フォーラム型のミュージアム」とは半世紀以上前にアメリカのミュージアムを念頭に唱えられた理念型で、日本でもミュージアム界で盛んに論じられてもいるが、日本では「公共」という考え方自体が曖昧なままであり、実現されているとは言いがたい状況にある。《爆撃の記録》からこのワークショップ、そしてウェブサイトへという展開は、公共で/の記憶を語りつぐこと(=パブリック・ヒストリー)における「美術」や「美術館・展覧会」という方法の可能性を示した好例だと思う。

 

 

続く記事:2021年7月11日

phoiming.hatenadiary.org