建築は「調理済み」の展覧会素材? 「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」@東京国立近代美術館

kumakengo2020.jp

キュレーションが立っている。コンセプトすなわち言語による切り取りが明晰に入ってくる。「建築」という営みそのものが、コンセプトを立てるスタイルをとることに由来していると感じる。すでに「調理済み」で、その点では佐藤可士和展の際に「デザイン」を展示することに感じたことと似ている。


切り込むよりもバランスと目配りの展覧会。全体を貫く「ネコ」がもつキャッチーさと公共性へと導かれる奥行き。(二部構成の後半無料パートには、ネコについての、ネコのよるリサーチがなされているが、コロナ禍に気がついたと説明されていて時々性も与えられている。)各章を構成する五つの概念の端的かつ際立つテーマ性。展示のコンパクトさとも合間って、観るに優しい展覧会という印象。


アーティストとのコミッションワークやこれまでの仕事のコラボレーターへのインタビューによって「外部からの視点」を取り込む仕方もぬかりなく、バランスに長けている。瀧本幹也梼原町の隈建築を撮影したモノトーンの映像は三面の屏風状のスクリーンに投影され、画面それ自体がモノ的で極めて建築的な物体性を帯びる。藤井光が長岡シティホールアオーレを映したドキュメンタリーは、施設を基点に人々の交差を撮らせれば右に出る者がいない巨匠フレデリック・ワイズマンを思いださせる。


最終週にはオンライン予約をとりやめ整理券を配布していたほどの盛況なことにも驚いた。土曜日、開館30分前に訪れて30分待ちで昼下がりのスロットが予約できた。