【論文】「ミュージアムでキャンセルカルチャーは起こったのか?」を『人文学会雑誌』に寄稿しました

 「ミュージアムでキャンセルカルチャーは起こったのか?」という論文が、武蔵大学人文学会の研究紀要から刊行されます。ふざけたタイトルに見えるかもしれませんが学術論文です。以下からDLできるようにしてあります。

小森真樹「ミュージアムでキャンセルカルチャーは起こったのか?ーー脱植民地化と人体のアイデンティティ政治をめぐる博物館倫理」『人文学会雑誌』武蔵大学、55巻2号、2024年。

 フィラデルフィアにある医学博物館ムター博物館で昨年起こった炎上騒動を時事的に記録する意図も込め取り上げています。脱植民地主義を旗印に人体コレクションの扱いなどについて倫理面で同館が実施した改革は、スタッフやファンなど旧体制の支持者からは「キャンセルカルチャー」などと批判されて全米規模で報じられるほどの大きな騒ぎへと発展しました。

 この一件はジャーナリズムでは「意識高い系改革派VS現状維持派」などと説明がなされてきたのですが、実はこの現象は、長らく続いてきたミュージアムや人文学、ひいては社会全体の「倫理」変化の歴史のなかにおいて見たほうが適切に理解できるのではないかと問題提起しています。

 博論研究の頃から追いかけている同館は定点観測を続けている調査事例でもあり、また、過去に住んだ街のなかでも最も思い入れが深いフィラデルフィアの問題としても捉えられるもので、色々と「自分ごと」感がある話ということもあって力が入れて書きました。