武蔵大学の英米文化学科では、「アメリカ研究」と「ミュージアム研究」という二つの学問領域を学ぶゼミを主宰している。アメリカはともかく「ミュージアムを学ぶ」とはあまりイメージがわかないかもしれないが、例えばこういうことを議論する。ニューヨークに訪れる観光客がその度に必ずメトロポリタン美術館を「巡礼」する事の意味は?とか、日本のお寺で拝まれる仏像と、アメリカの美術館で鑑賞される仏像の違いは何か?とかである。こうした“とんち”のような問いを投げかけられたゼミ生たちは、頭をひねって考えてくれる。
今年はコロナ禍で授業も大きく変わった。主題を「コロナ禍のミュージアム」に定め、時期刻々と変化するミュージアムについて学んでいる。前期授業では、オンラインで様々に繰り広げられているヴァーチャルミュージアムの取り組みについて調査をした。世界各地のミュージアムのコロナの取り組みについて、結構な数のデータを集まっている。
ただ今進行中の後期授業では、研究成果を実践的に考えるために、「ヴァーチャルミュージアムプロジェクト」を立ち上げたところだ。11月1日に始まる武蔵大学の文化祭「白雉祭」がお披露目日となる予定。
本物そっくりに作られたヴァーチャル武蔵大学キャンパスを、cluster内に設置。自由に歩き回ることができる。clusterとはヴァーチャル空間のプラットフォームで、コロナ期にはゲームのFortniteと並んで様々なイベントが開催されて話題になった。春にはヴァーチャル再現された渋谷の街並が公開され、今もちょうど大きなハロウィンのイベントをやっている。武蔵大学ヴァーチャルキャンパスの公開まであと数日。文化祭期間に現れたキャンパス内の展覧会はどのようなものか、ぜひ「足をお運び」くださいませ。
コロナ期には今までにも増して多くの活動が、インターネットを介して行われるようになった。当初は何かの「代替」であったり「新奇」な部分が目を引いたコロナカルチャーが、現在では「持続性」へと焦点が移ってきたように感じる。「新しい日常 new normal」という流行り文句はこれを象徴したものだ。ゼミ生が取り組む「ヴァーチャルミュージアム」プロジェクトの行方を案じながら、デジタルに焦点を当てたミュージアム教育とは、コロナ後の社会においても「展示について学ぶ」一つの方法となるだろうかと予感めいたものを感じている。
よちよち歩きではじまったプロジェクトは冬まで続きます。
どうぞご笑覧ください。
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展示物の一部、ちょっとお蔵出し
001Face Mask Required (For Museum Admission)
2020年
ウェブサイト
1863年に開館した全米初の医学博物館ムター博物館は、現在も医療教育の最前線である。所在するフィラデルフィア市は1918年に史上最悪のインフルエンザパンデミックによって多くの死者を出した都市。昨年には予見的に新展示「つばは死を拡げる(Spit Spreads Death)」をオープンしていた。
002
Social Distancing (Will Be Enforced)
2020年
ウェブサイト
ムター博物館で人気の高いコレクションのひとつに、「巨大大腸(Mega Colon)」がある。現在では完治する治療法があるが、あまりに早く生まれすぎた不幸な男性が所持したこの検体は、推奨される「ソーシャルディスタンシング」を超える、8フィート(243cm)もの長さがある。