2020-01-01から1年間の記事一覧

よく知る風景を「見知らぬもの」にする事と気まずさの美学:『もう終わりにしよう I’m Thinking of Ending Things』(チャーリー・カウフマン Netflix、2020)

Netflixの『もう終わりにしよう I’m Thinking of Ending Things』を観た。今年のベスト級に良かった。 シンプルなようでつかみどころのないプロットから、キーワードを列挙してみる。実家と帰省。家族の価値観との違和。ドライブ。昔通った学校。甘すぎるア…

clusterに武蔵大学ヴァーチャルキャンパス「ヴァーチャルミュージアム」を公開(11/1予定)

武蔵大学の英米文化学科では、「アメリカ研究」と「ミュージアム研究」という二つの学問領域を学ぶゼミを主宰している。アメリカはともかく「ミュージアムを学ぶ」とはあまりイメージがわかないかもしれないが、例えばこういうことを議論する。ニューヨーク…

日本の現代美術をもっと脱植民地化すべきだった/森美術館「STARS:現代美術のスターたち――日本から世界へ」

森美術館で開催されている「STARS:現代美術のスターたち――日本から世界へ」展を観た。 選ばれた六人の現代美術家は、贔屓目に言っても「日本を代表する」と言って良いアーティストたちである。宣伝文句でも謳われている通り、この展示ひとつで、第二次大戦…

「パブリックヒストリーが開く虐殺の歴史――オクラホマ州タルサをトランプ集会とHBOドラマ「ウォッチメン」で見る」を寄稿しました。

フィールドワーカーためのウェブマガジンFENICSで、コロナ期の社会運動について連載中です。第6回が公開されました。 「パブリックヒストリーが開く虐殺の歴史――オクラホマ州タルサをトランプ集会とHBOドラマ『ウォッチメン』で見る」 (連載・コロナ禍のフ…

「ハッシュタグをハックする:K-POPファンのブラック・ライブズ・マター運動」+「正義の荒らし?警察アプリとTikTokをめぐるK-POPファンの平和攻撃  」をウェブマガジンFENICSに寄稿しました

「ハッシュタグをハックする:K-POPファンのブラック・ライブズ・マター運動」 「正義の荒らし?――警察アプリとTikTokをめぐるK-POPファンの平和攻撃」 (連載・コロナ禍のフィールドワーク『FENICS』 2020.7.25 + 2020.8.25) フィールドワーカーためのウェ…

大統領の「死」を観光する:テキサス州ダラス「六階博物館 The Sixth Floor Museum」のダークツーリズム/タナツーリズム

テキサス州ダラスに「六階博物館(The Sixth Floor Museum)というものがある。ジョン・F・ケネディの暗殺に関わる資料を調査し、大統領の功績を顕彰するミュージアムだ。歴史協会が1989年に開いた。このサイトには「暗殺カレンダー」があって、とてつもなく…

【便利アイデア・備忘録】学習管理システム(Blackboard)で大部数のレポートを採点する際に効率化する方法

コロナ禍で教育の遠隔化が進んでいます。筆者の勤める大学でも前期は全て遠隔授業に、残念なことに今年度は後期もその予定です。感染拡大を阻止するためには止むを得ませんが、短期的にも長期的にも教育への影響を強く懸念していて、新たな授業のかたちを模…

西池袋マダムシルクは「旅行」をする場所だった。

お盆の相変わらずうだるような暑さの中、自転車を走らせて西池袋へ向かった。或るバーが閉まると聞いたからである。マダムシルクは、雑居ビルが立ち並ぶ繁華街の中心地区から、少しだけ外れたところにある。 池袋の大学に通っていた頃、初めて訪れた。飛び込…

ジョージ・フロイド圧死事件とブラック・ライヴズ・マター運動の拡大【資料編】

ブラック・ライヴズ・マター運動に関する参考資料を集めています。 (1)メディア、報道、論評、研究 ○エッセイ ○新聞・雑誌記事 ○研究者や学会の発信・声明 ○ラジオ、ウェブ動画番組、シンポジウム(日本語中心) 報道、ポッドキャスト、YouTube セミナー…

スパイク・リー「3 Brothers」(2020):未だに奪われ続けている「物語」を作る力を取り戻すカットアップ

Spike Lee ”3 Brothers” (2020) 3 Brothers-Radio Raheem, Eric Garner And George Floyd. pic.twitter.com/EB0cXQELzE — Spike Lee (@SpikeLeeJoint) 2020年6月1日 黒人の苦境を題材に撮り続けてきたハリウッド映画監督スパイク・リーによるショートフィル…

「家族」が必ず参加しないといけないのなら選挙活動は怖いと思った:大島新 監督『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020年)@ポレポレ東中野

大島新 監督『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020年)をポレポレ東中野で観た。 現職衆議院議員小川淳也氏の選挙・政治活動を、17年にも渡って撮影したドキュメンタリー。 自分が教える大学の講義の話になるが、折に触れ、「楽しい政治」をキーワードに…

「東京・代々木『ブラック・ライブズ・マター・トーキョー』デモのエスノグラフィー:ネットで軽やかにフィールドをつなぐこと、『見えない』ものに目を凝らすこと」をウェブマガジンFENICSに寄稿しました

フィールドワーカーためのウェブマガジンFENICSで、コロナ禍のデモ・運動につい連載をしています。その第3回が公開されました。今回は、日本国内でのブラック・ライブズ・マター(BLM)の抗議行動に参加して考えたことを振り返っています。 東京・代々木「…

NHK『世界のいま』の黒人人権運動の紹介はどこが「差別的」だったのか?アメリカ学会の研究者からの声明のポイント

この声明文は、NHKに対して問題を伝え、再度正式な謝罪や対応を求めるもので、論拠をのせた解説にもなっています。問題の所在を以下の4点に分けてうまく説明しています。関心があるのに問題がわからない、だからあまり口に出せないなあ、と感じていた人はぜ…

【随時更新】コロナ時代の「文化支援」の様々な試み

この記事では、新型コロナウイルスのパンデミック以後の社会における、アートやエンターテインメントなど広い意味での「芸術文化」に関する文化支援・文化政策などについてまとめています。 ●政府・自治体による文化政策 【国内】 政治・自治体の動き シンポ…

「コロナ禍のフィールドワークとアメリカのカーデモ(前)(後) - コロナ禍のフィールドワーク(連載)」をウェブマガジンFENICSに寄稿しました

フィールドワーカーのためのウェブマガジンFENICSに連載している記事が公開されました。アメリカでの自動車によるデモについてのものです。 「コロナ禍のフィールドワークとアメリカのカーデモ(前)(後) - コロナ禍のフィールドワーク(連載)」 『FENICS…

Do you need culture? ジャンルを超えた文化支援のヨコつなぎ

これまでのエントリーでも紹介した通り、‪コロナ禍の文化支援にはそれぞれの表現ジャンルで様々な試みが起こっています。 それらに対して、領域を横断する大規模なプロジェクトが立ち上がりました。#WeNeedCulture ‬のハッシュタグで情報が広がっています。…

【掲載情報募集中】ライブハウス・クラブへの支援活動情報まとめ

音楽関連の支援活動情報のまとめです。(軽音楽・非クラシック中心) 情報ウェブマガジンの themassage.jp によるもので、支援プロジェクトについて掲載もできるそうです。 themassage.jp

盗用なのか流用なのか:米大手スーパー「トレーダージョーズ Trader Joe’s」から考える「文化のアプロプリエーション」」

全米売り上げで単純に測っても、2000年代半ばには全米スーパー第二の売上を誇るほどに成長し、米国を代表するスーパーマーケットとなった。この人気について少し解説してみよう。

アラスカ州で『グレート・ギャッツビー』などが教科書から排除

アラスカ州パルマー郡のマタヌスカ・サストナ学区の教育委員会は、『グレートギャッツビー』などを含む古典文学を、11年生(高校2年)の教科書として使用することを禁じる発表をしました。

本屋を救うブックストア・エイド基金(5月31日まで)

ブックストア・エイド(Bookstore AID)基金 さらに詳しく 【詳細版(公式)】 【簡易版】 ↓ 読んで知る ↓ 聴いて知る 参加加盟店一覧(転載) ブックストア・エイド(Bookstore AID)基金 クラウドファンディングで書店・古書店への支援が立ち上がりました…

【ネタバレ注意】原一男『れいわ一揆』5つの「おもしろい」:世界中で崩壊する民主主義に蔓延るグロテスクの縮図

※以下、本編に関するネタバレがあります。事前に内容を知りたくないという方はご遠慮ください。 『れいわ一揆』2019.11.2@東京国際映画祭 監督:原一男 製作:島野千尋 撮影:原一男 島野千尋 岸建太朗 堀井威久麿 長岡野亜 毛塚 傑 中井献人 田中健太 古谷…

ライブハウスをつなぐ支援、音源で還元:MUSIC UNITES AGAINST COVID-19

ライブハウス支援にも参加してみました。お礼(リターン)は錚々たる面々による73曲の音源。ROVO、スチャダラパー、七尾旅人さん、蓮沼執太くんが好きです。 支援するライブハウスを一件だけ選ぶシステムで、これは迷わされる。複数回支援してもリターンは同…

「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」:映画文化と経済を持続させる鮮やかなその仕組み

「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」が、開始後3日目にして、早くも目標額の1億円超を達成しました(5月14日まで)。祝。参加させてもらっている身としては余計に嬉しいものです。これが映画の現場の経済規模としてどの程度の意味を持つのか…

コロナ期に広がる自動車によるカーデモ:自動車による社会運動というアメリカ的伝統?

車を使ったカーデモがアメリカやブラジルなど世界各地で広がっている。日本でも実施できないだろうか。 もし日本でも首相官邸前とかで実現したら圧巻の光景になるだろう。4月14日には渋谷で「要請するなら補償しろ」デモが感染を拡大すると非難されたが、こ…

想田和弘『精神0』@仮設の映画館プロジェクト:上映文化の存続のための「映画の経済」

ドキュメンタリー映画監督の想田和弘さんが新作の『精神0』を、「仮設の映画館」で上映公開します。 『精神0』 2020年5月2日(土)10:00〜 配給:東風 渋谷シアター・イメージフォーラム、岡山シネマクレール他 seishin0.com ※追記:ちょうど取材地の岡山…

あいちトリエンナーレ2019の記録集にラーニング企画の美術評論を書きました

昨年行われたあいちトリエンナーレ2019の記録集に評論を寄せました。 pdf版でも公開中です。 追記:残念ながら紙媒体は部数がとても少ないそうです。増刷を検討中とのことで、ご希望の方は事務局までメールで熱望を伝えると良いかもです。電凸はしないでくだ…

コロナウイルスとミュージアムとデジタルと。

都市の封鎖や外出の自粛が続くなかで、モノをひろげてしめす(=展・示)ところたるミュージアムでは様々に試みがなされています。コンテンツを送り届けようとする方も、それを楽しむ私たちにとっても、ミュージアムが物理的な場(サイト)に強く依存してい…

追悼:新型コロナウイルスで亡くなったファウンテインズ・オブ・ウェインのアダム・シュレンシンジャー(FoWの最新映像アリ)

4月1日に新型コロナウイルスで惜しくも亡くなった、ファウンテインズ・オブ・ウェインのアダム・シュレンシンジャーについて追悼文を綴りました。 2日に草稿を書いてから改稿を繰り返していて、文字数も公開までの道のりも長大なものになってしまいました…

コロナウイルスに対する各国の文化支援。メトロポリタン美術館から米国議会への請願書「Tell Congress to Save Culture」邦訳

コロナウイルスに対する各国の文化支援。 イギリスは、212億円。カウンシルを通じて美術館やアーティストに配分。ドイツは、6兆円。個人の住宅費や光熱費にも1兆円以上。アラブは、4500万円。中止になったアートフェアの代わりに作品を買い上げ。日本は、「…

コロナウイルス・ミュージアム休館情報まとめ:ニューヨーク編[2020.3.14時点]

ニューヨークの主要ミュージアムの休館情報をまとめました。 12日にはグッゲンハイムやニューミュージアムとか立て続けにDMが届いたのでちょっと気になって調べてみました。現14日時点でほぼ全滅で、セックスミュージアムとか商売っけのあるところだけ開いて…