大人計画『SAD SONG FOR〜』、三谷幸喜『ベッジ・パードン』

『SAD SONG FOR UGLY DAUGHTER』は、大人計画宮藤官九郎脚本シリーズ「ウーマンリブ」公演の12回目。松尾スズキもそうだけど、すごーく差別的な価値観とか語彙をたくさん散りばめてくるのが気になる。楽しいんだけどね。現代社会の「問題」を核にしたコメディだから、それに本気で取り組んでいるというよりは単に設定に使っているだけなので苦笑を呼ぶ。面白いんだけどね。

もうちょい言えば、苦笑であれそれを笑っちゃうこと自体を対象化できていないところが浅薄。それと比較して『ベッジ・パードン』で三谷幸喜がやってたのは、留学中の日本人の英語コンプレックスとか(しかも夏目漱石!)階級社会イギリスのどうしようもなさや、上から目線の温情主義(パターナリズム)と差別意識のスレスレな感じとかを超コメディ――それもくだらなすぎる愛すべき吉本新喜劇的笑い!――に乗せて観客に笑い飛ばさせることだった。笑いの中で観客もまた演者たちと同じようにアンビヴァレントを経験させられるという仕組み。
こういった、クリアカットだけどけっこう複雑な構造を用いて笑いの重層性を対象化している点が三谷幸喜はすごい。特に演劇作品で思うけど、彼は徹底的に構造にこだわる作家だなと思う(マスコミ業界職業作家を通過した職人的なところも含めて)。

大人計画、「僕/私ってミーハーだし」と「ミーハーじゃないもん!すきなだけだもん!」の両言説を掬い上げるところに彼らの量的凌駕の所以を見た。あ、僕は後者ね。