Spike Lee”Jungle Fever” Woody Allen”Everyone Says I Love You

スパイク・リー監督、脚本による『ジャングル・フィーバー』(1991)。ニューヨークはハーレムのアフリカ系アメリカ人=黒人男性とイタリア系アメリカ人=白人女性の恋愛悲劇。90年代前半のニューヨークの人種観や宗教、労働など階層状況が非常によくわかる。

よくわかる…のだろうか、この映画は。ドラッグ中毒、保守主義キリスト教観、人種と労働差別、個人の恋愛とエスニシティを基礎としたコミュニティの排他性など、アメリカ社会の研究ではおなじみの問題が紋切り型のストーリーで描かれる。


音楽はスティーヴィー・ワンダー。時代を感じるPV的な演出がイカす。

よくわかった気になるのが最も危険なのではないかという気もする。
とはいえハリウッド映画にはめずらしく後味が非常に悪い映画で、アクティヴィスト的な問題摘発のドキュメンタリー映画を観た後と同じような感覚に陥って「ああ、人種差別、ダメだよね」という気持ちにはなる。これが「終わり」ではなく「始まり」だという気持ちをどうやって保持するのか。単なる社会問題のカタルシスに陥ったらそれこそ危険だ。

ちょうど今日の昼間、クリスマスということでテレビでやっていたウディ・アレンの『世界中がアイ・ラヴ・ユー』(1996)はどうやっても爆笑しかできないブラック・ヒューモアでユダヤ系のアメリカ社会を「告発」していた。しかし、シリアスに受け止めて終わらせることは容易くとも、笑ってしまって終わりとはなかなかいかないのが人の性。先のエントリーで述べた三谷幸喜もしかり。
世界中がアイ・ラヴ・ユー [DVD]

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