講義「書かない人類学」を振り返る

立教大学で昨年度から始めた「書かない人類学」の講義を振り返ってみる。客観主義と植民地主義批判の後の時代の反メディア的で、マルチメディア的な文化人類学的実践を、「アート/ミュージアム/アクティヴィズム/イメージ」に分けて論じる試み。

 

マリノウスキのフィールドワーク批判、ミュージアムで語られる東日本大震災、「主戦場」に従軍慰安婦ミュージアムWAM朝鮮学校美術部のヘイトへの対抗作品、イルコモンズにバンクシーChim↑Pom、人間動物園から藤井光とPortB、ワイズマンから想田和弘の観察映画まで、心地よいカオス感のある授業で毎週準備していて楽しかった。幸い今年も担当させてもらえることになったので、どんどんアップデートしていきたい。

 

レポートも良い意味でカオス感。読んでてめちゃくちゃ楽しい。被災地ボランティアに参加して書いたブログを素材にした当事者性論からの自己批判アイヌの慶大生YouTuberによる「自文化」紹介の活動を「書かない」で社会に実感を与える実践と位置づけるもの、異文化表象の認識論批判をソシュールドゥルーズからリチャード・セラにつなげたアクロバティックな議論、「書かない音楽」を定義し始めてクラウトロックとか論じちゃう人もいた。

 

自身の主催していたプロジェクトを始めて授業で扱えたのも楽しかった。2010年に岡山市で開催した、ゲストハウス型イベント展示アーティストインレジデンス公民館スペース「かじこ」。後続企画は鳥取の「たみ」と「Y」。あ、思いっきり言葉にして「書いて」しまった。

 

「書かないレポート」も大歓迎。と言ったら、プレゼンのビデオを送ってきた学生がいてワクワクした。家族でこの授業やそこで扱った事例について討議をしました!これを「書かない人類学」としてレポします。という学生も。

 

定点観測的に同じ場所でのサウンドスケーピングをし続けるラジオ番組「音のラジオ」。

 

最もグッときた「書かないレポート」は、住んでる町を舞台にゲームを制作したもの。荒川区平井のストリート各所だけでなく、ブログやLINEなどネット情報とも合わせたリアル謎解きゲーム。こうした仕方で、プレイヤーが「町」をフィールドワークするのではないか、と。なんとオープニングムービーまで! 卒制として指導してみたい。。。