column/review

【ネタバレ注意】原一男『れいわ一揆』5つの「おもしろい」:世界中で崩壊する民主主義に蔓延るグロテスクの縮図

※以下、本編に関するネタバレがあります。事前に内容を知りたくないという方はご遠慮ください。 『れいわ一揆』2019.11.2@東京国際映画祭 監督:原一男 製作:島野千尋 撮影:原一男 島野千尋 岸建太朗 堀井威久麿 長岡野亜 毛塚 傑 中井献人 田中健太 古谷…

「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」:映画文化と経済を持続させる鮮やかなその仕組み

「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」が、開始後3日目にして、早くも目標額の1億円超を達成しました(5月14日まで)。祝。参加させてもらっている身としては余計に嬉しいものです。これが映画の現場の経済規模としてどの程度の意味を持つのか…

コロナ期に広がる自動車によるカーデモ:自動車による社会運動というアメリカ的伝統?

車を使ったカーデモがアメリカやブラジルなど世界各地で広がっている。日本でも実施できないだろうか。 もし日本でも首相官邸前とかで実現したら圧巻の光景になるだろう。4月14日には渋谷で「要請するなら補償しろ」デモが感染を拡大すると非難されたが、こ…

あいちトリエンナーレ2019の記録集にラーニング企画の美術評論を書きました

昨年行われたあいちトリエンナーレ2019の記録集に評論を寄せました。 pdf版でも公開中です。 追記:残念ながら紙媒体は部数がとても少ないそうです。増刷を検討中とのことで、ご希望の方は事務局までメールで熱望を伝えると良いかもです。電凸はしないでくだ…

追悼:新型コロナウイルスで亡くなったファウンテインズ・オブ・ウェインのアダム・シュレンシンジャー(FoWの最新映像アリ)

4月1日に新型コロナウイルスで惜しくも亡くなった、ファウンテインズ・オブ・ウェインのアダム・シュレンシンジャーについて追悼文を綴りました。 2日に草稿を書いてから改稿を繰り返していて、文字数も公開までの道のりも長大なものになってしまいました…

【ネタバレ注意】想田和弘『精神0』:「無為=0の精神」で映画における「物語の否定」を試みる映画

想田和弘監督の新作『精神0』を観た。 目次: (1)「公/私」「聖/俗」の二分法とそれを崩す「女性」の存在:「物語」を否定し続ける構成 (2)撮影=観察の倫理と論理:岡山で生まれた筆者が見た景色 (3)「純愛」映画? (4)「中年/自己/物語」…

宝塚歌劇団『シカゴ』@ニューヨーク・リンカーンセンター

ニューヨークで宝塚歌劇を初めて観ました。非常に興味深いものでした。演目の『シカゴ』はブロードウェイで20年のロングランを誇っているもので、ご存知のとおり、宝塚歌劇団はわりと「まんまブロードウェイの翻訳」な演出で日本語でそれを演じた。ニューヨ…

構え銃…打て!/お気軽に撮影を Point and Shoot

目の前で現実に起こっていることの悲惨さと、それがどうしようもなくキッチュなものとして現れている居心地の悪さ。その意味で『アクト・オブ・キリング』以来の傑作ドキュメンタリーだと思う。マーシャル・カリー監督*1、2014年。@フィラデルフィアフィルム…

「10年遅れた日本のアート界」の象徴としての丸木位里「原爆の図」

「10年遅れた日本のアート界」の象徴としての丸木位里「原爆の図」:Chim↑Pomキュレーション「ひっくるかえる」展@ワタリウム美術館 http://www.watarium.co.jp/exhibition/index.html例の岡本太郎「明日の神話」への「加筆」事件で有名になったChim↑Pomキュ…

アノニマスと仮装と変装

ウェブサイト攻撃や「祭り」による問題の顕在化などオンライン上で反権力的な行動をとるハクティヴィズム(=ハッキング+アクティヴィズム)集団アノニマスによる渋谷の清掃運動が行われた。今回の行動は、直接には6月に可決された「違法ダウンロード刑罰化…

TACO USA, SLEEPING FOOD STUDY

朝から不思議にタコスが食べたいなあと思っていたら、目覚まし代わりにかけていたラジオ番組でこの本を紹介する特番がかかっていたことが判明(ネットラジオなので数時間毎に同じ番組がかかる模様)。サブリミナル効果…。 Taco USA: How Mexican Food Conque…

安世鴻による元従軍慰安婦写真展@新宿ニコンサロン

先週行って来ました。小さなギャラリーにセキュリティが10名弱、空港並みのセキュリティチェック、普段のニコンサロンで出来ることへの規制(廊内写真撮影、チラシ配布、カタログ販売)となかなか辟易な状況です。人権系の活動団体の方々がボランティアでス…

チョコレート・ミリタリー・ビジネス:『チョコレートの帝国』

Joel Glenn Brenner, "The Emperors of Chocolate: Inside the Secret World of Hershey and Mars." Ramdom House, 1999(ジョエル・ブレナー『チョコレートの帝国』みすず書房、2012年).チョコレートの帝国作者: ジョエル・G・ブレナー,笙玲子出版社/メー…

「当たり前に生きる」ことの脆さ:ワン・ビン(王兵) 『無言歌』

当たり前に生きることとはこれほど難しいのか。本作の舞台は1960年、中国西南部の荒地。文化大革命前、毛沢東は自由な批判を受け入れるとして「百花斉放・百家争鳴」の運動を推進した。しかし、それに従って政府・毛沢東を批判した人々は、翌年徹底的に弾圧…

和風・純アメリカなるもの:三谷幸喜『君となら NobodyElseButYou』

三谷幸喜脚本による1995年の舞台。二年後に再演。共にパルコ劇場。抱腹絶倒のシットコム。当時のコピーがニューヨークタッチの純和風お茶の間ホームドラマ。 親子ほどの年上の恋人をつれてきた娘が家庭に巻き起こす 騒動をアップテンポに描く。とある。当時…

水、動植物、民間療法は誰のものなのか:Irena Salina『FLOW』

ある機会に、水ビジネスについてのドキュメンタリー、『FLOW For Love of Water』(Irena Salinaイレーナ・サリーナ監督、2008)を『松嶋×町山 未公開映画を観るTV』(TOKYO MX)で観たのを思い出す。 近代のインフラ開発事業以後、世界中の水は、わずか3社…

インディアンマスコット論争、パロディと対抗言説、年始の「祭り」

以前、アメリカの大学にはそれぞれマスコットがあって云々という話をした。 スカンクだったのをわざわざ止めてまで黄色ナメクジを選んだUC Santa Cruiseはばかだなあ、という笑い話ならまだいいけど、マスコット化されまくっているネイティヴ・アメリカンの…

郊外論と当事者性:サイタマノラッパー、サウダーヂ、ひかりのおと

作品評ではないのだけれど、「ひかりのおと」を観たあと考えたけど書ききれなかったことを備忘録的にまとまりなく。●「地方郊外」発の物語と当事者性 こうした流れは、ジャーナリストや学者たち「中心」の立場から地方を「周縁」化する言説に対して、当事者…

山下敦弘・Q.B.B. 『中学生日記』

先の『ひかりのおと』のエントリーで考えたことはなんだろうとふと考えてみたんだけど、「観客がどういう立場で映画を観るのか。そのことを制作者はいかに設定(ないし操作)できるのか」ということだろうか。エントリー書きながら実家にDVD持って帰ってきて…

「ドキュメンタリーなるもの」の力:山崎樹一郎監督『ひかりのおと』

山崎樹一郎監督による長編デビュー作『ひかりのおと』(2011)を観た。トマト農家を営むかたわら5年以上温め続けた映画の構想は、監督自身が住む岡山県真庭市を舞台にした酪農家のホームドラマとして結実した。過疎地域で酪農を営む一家を描きながら、若年世…

Spike Lee”Jungle Fever” Woody Allen”Everyone Says I Love You

スパイク・リー監督、脚本による『ジャングル・フィーバー』(1991)。ニューヨークはハーレムのアフリカ系アメリカ人=黒人男性とイタリア系アメリカ人=白人女性の恋愛悲劇。90年代前半のニューヨークの人種観や宗教、労働など階層状況が非常によくわかる。…

大人計画『SAD SONG FOR〜』、三谷幸喜『ベッジ・パードン』

『SAD SONG FOR UGLY DAUGHTER』は、大人計画の宮藤官九郎脚本シリーズ「ウーマンリブ」公演の12回目。松尾スズキもそうだけど、すごーく差別的な価値観とか語彙をたくさん散りばめてくるのが気になる。楽しいんだけどね。現代社会の「問題」を核にしたコメ…

砂田麻美『エンディングノート』/平野勝之『監督失格』

吉祥寺バウスシアターで死についての二本のドキュメンタリーを立て続けに観る。ある意味において共に、<葬儀=喪=忘却装置>をテーマにしたドキュメンタリーとして観た。『エンディングノート』は監督自身の父親が末期がんで死の宣告を受けた後の約一年間…

Alan Parker(アラン・パーカー) ”Pink Floyd’s The Wall”

監督失格を観にバウスシアターに来てみたが、気がつけばPink FloydのThe Wall爆音上映を観ていた。 今夜はカタルシスを選ぶ。 没入が達観を生むこともあるんだ。いつも先んじて身を引いていた。忘却じゃなくて昇華すること。そして。一日に二度もthe Wallを…

Two essentially-externalized shows: The Jewish Museum, and Otomo Yoshihide & Christian Marclay at the Japan Society.

● The Jewish Museum Amerian Jewish Societyの運営するミュージア 。ユダヤの歴史についての常設展と、二つ程度の特別展が常時開かれている。ユダヤ人には文化人も多いがゆえに他のエスニ...

ポスト・ミュージアムにおける文化の表象/再現(representation)の政治学:Bronx Museum of The Arts

●Bronx Museum of The Arts 広めのギャラリーが二つとオディトリア 一つのそれほど大きくないミュージア 。「現代美術」と「ブロンクス」がコレクション・企画の二つの柱。 -URBAN ARCHIVE...

シュールなアメリカの現実(リアル): Whitney Museum of American Art, Museum of Biblical Art, and Museum of Arts and Design

●Whitney Museum of American Art 彫刻家でもあった名家Vanderbilt家の娘Gertlude Vanderbilt Whitneyのコレクションを元にした「アメリカ現代美術」をテーマにした美術館。現建築はレ ・クールハー...

せっくすのひ: thinking exhibiting sexuality, neither naughty nor masturbating, at Location One and Museum of Sex

ようやく段々と体調も戻ってきた様子。 休息しながらう う しているが、今日は思い切ってミュージア を巡ることにする。thrift store(古道具屋)を物色していると面白いものがあり...

The Studio Museum in Harlem

ちゃんとしたベッドで寝て起きたら思いのほか体調は良かった。でも今日は完璧に体調を治す日にしよう。 ノートやブログ、経理など事務作業も残っているし。 こういうときに便利...

Exaggeration of His American Patriotism: Guggenheim Museum

家の掃除や洗濯、片付けを済ます。新しく合鍵を作ったり い りもしてみたが、相変わらず鍵の問題がうまくいかない。この問題はひとまずおいておいて、グッゲンハイ 美術館へ...